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ご挨拶
今年も「まちかね祭」の季節が巡ってきました。「まちかね祭」は、毎年、メインテーマを掲げ、大学祭中央実行委員会を中心とした学生の皆さんが、自らの手によって企画・運営する大阪大学の恒例行事です。今年で65回目を迎えます。これまで培ってきた長い歴史と、その伝統を継承してこられた学生の皆さんのご尽力に深く敬意を表します。
今回のテーマは「ともしび」です。このテーマには、単に火が灯る「光・明かり」の意味だけでなく、「希望・意思」を象徴する明かりという意味も込められていると伺いました。その時、私の頭の中に一つの格言が、まさにともしびに照らされてライトアップされたかのごとく、浮かび上がってきました。
『一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め。』
これは、江戸時代後期の儒学者である佐藤一斎(若い頃に大坂へ遊学し、大阪大学の精神的源流である懐徳堂の中井竹山に学び、後に江戸幕府直轄の昌平坂学問所のトップを務めた人物)が、その著書『言志四録』に残した言葉です。「ともしびを一つ携えて暗い夜道を行くならば、暗闇を心配することはない。ただ、その一つのともしびを頼りに歩んでゆけばよい。」というような意味でしょう。西郷隆盛は『言志四録』から101の言葉を厳選し手元に置いていましたが、この言葉もその中に含まれています。
皆さんはこの言葉からどのような印象を受けますか。明かり一つで暗闇を行くのは、とても孤独で不安なことに感じられるかもしれません。しかし、たとえ先を見通すことができない困難に直面したとしても、自分の心の中にある希望のともしび、すなわち志を持ち、本気で歩みを進める人のもとには、その温かい光が目印となり、仲間が集い、より大きな光となって輝きを放つことができると私は信じています。それはちょうど、本学のもう一つの精神的源流である適塾を開いた緒方洪庵のもとに多くの塾生が集い、新時代を切り拓いていったように。
今日は皆さん待望の大学祭です。皆さん一人ひとりが希望の光を胸に大学祭を心から楽しんでください。そして、秋深まるキャンパスへお越しいただいた来場者の皆様を温かく包み込むような、アットホームな大学祭となることを心より祈っています。
大阪大学 総長 西尾 章治郎
ご来場の皆様、こんにちは。本日は、お忙しい中2024年度まちかね祭にお越しいただき、誠にありがとうございます。また、昨今の不安定な情勢下においても無事まちかね祭を開催できるのは、大学職員の皆様や出展団体の皆様をはじめとする皆様方のお力添えの賜物であると存じます。ご協力いただいた全ての皆様に心より御礼申し上げます。
今年度まちかね祭のメインテーマは「ともしび」です。時には私たちを温かく見守り、時には暗闇を照らしてくれる、「ともしび」。このテーマには、まちかね祭を通して集まったみなさまの心のともしびが大きな火となり、私たちの未来を照らす光となるようにという願いが込められています。
時代を超え、たくさんの皆様と作り上げてきたまちかね祭も今年で65回目を迎えます。ある時は皆様の夢や希望に、ある時は皆様の輝きの瞬間となったまちかね祭という「ともしび」を、今後も守り続けていくことができれば幸甚でございます。
皆様の心のともしびはなんですか。阪大生の心のともしびを覗いてみてください。
大阪大学大学祭中央実行委員会 委員長 小林 咲子